オレの田舎には「ジュンサイ池」って呼ばれてる池がある。
食べるジュンサイを栽培していた名残の池です。
そこで変死体が上がったんです。
第一発見者はたまたま帰省していたオレ。
年齢は50代とおぼしき男性。
溺死のようなのだがえらく奇麗な死体でした。
一応現場検証に立ち会ったんですが、警官も俺と同じ印象を持ったらしく
第三者が関与している可能性が高い。と言われた。
まずは引き上げて岸辺で検死をしている横でオレはあれこれ聞かれました。
根掘り葉掘り聞かれるのでいい加減うっとうしくなったオレは仏さんに目を移した。
革靴を履いた男性の溺死体。
気分のいいものではない。
そこで異変に気がつきました。
検死官は気づいてないようなのですがどうも足が少しづつ池に動いてる!
冷や汗をかきながらオレはその異様な光景に釘付けになった。
少しづつ足は池へと動いている。
「検死官は気づいてないのか!?」
オレは必死に目配せをしたが検死官はレポートや写真撮影に忙しい。
死体の足はなおも池へと動いている。
「このままだと池にまた転げ落ちるぞ…」
内心そう思いながら釘付けの視線が離せないまま警察官の質問にはうわのそらで答えていた。
じりじり…。
足はもうぎりぎりで池に転げ落ちるところまで動いていた。
警察官が
「分かりました。あとは当方が処理致しますので。ご協力感謝します。」
と言うか言わないかの瞬間、仏さんが池に転がり落ちた。
その瞬間オレの耳に粘ついた声が聞こえた。
「か”え”る”!」
すごい水音がして、周りはどよめいた。
オレは別の意味で驚いて、池に目をやったが仏さんは浮かびもしなければ沈んでもいなかった。
アオミドロの繁茂する池に「消えて」しまったのだ。
警察官たちは棒やさす叉のようなもので池をつつき回すが結局仏さんは見つからなかった。
「か”え”る”!」??
「帰る」ってことか?
どこに?
なんで?
どうやって?
とにかく、恐怖よりも疑問符が多い夏のある日の出来事だった。
結局未解決事件として処理された。と後に伯父から聞かされた。
その後、ジュンサイ池はいまではコンクリでできた浅い水遊び場になっている。
伯父に帰省するたびに聞いてみるが特に変なことは起きてない。という。
本当だろうか?
あの仏さんは結局どうなったのだろう?
今年も帰省する。
今度は足を運んでみようと思う。
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