銀座のビジネスホテル ~怖い話 体験談~

私は証券会社に勤務しています。

私の部署は今はもうそんなことは無いのですが、

7~8年位前までは毎年3月・9月の決算期には

ホテルを取って泊り込みで仕事をするほど忙しくなる部署でした。

これはそんな忙しい時期の出来事です。

私の勤務地の日本橋は証券会社が多く、どこの会社もこの時期の事情は同じなため、

いつも2ヶ月以上前にホテルの予約を入れるのですが、その年は私が少しのんびりしていたため

会社近辺のホテルは全て満室になってしまいました。

仕方無しに多少遠目でも構わないと言うことで、やっとの思いで

銀座の某ビジネスホテルに私と同期のS・先輩と部長の

シングル4部屋分の予約を入れる事が出来ました。

ビジネスホテルを予約すると言っても実際ホテルに着くのは夜中の2時・3時で

風呂に入って多少の仮眠が取れる程度ですが、その年は幸運にも多少早くホテルに行けそうでした。

私は予約の確認の電話をホテルにしました。ところがビックリです。

なんとホテルの手違いで他の予約とダブルブッキングされて、

シングル2部屋しか用意できなと言われたのです。

私はホテルに「何とかしろ」と猛烈に抗議しました。

ですがホテルの係は「部屋が無い」の一点張りです。

終いには私の部長まで巻き込んでの大騒ぎです。

結局「ツインなら何とか用意できる」との返事をもらい、

シングルの料金で部屋の用意をしてもらうことになりました。

ホテルに着いたのは夜中の1時を少し回った頃だったと思います。

眠そうな顔をしたフロントの係に鍵をもらい、私たち4人は各部屋に散りました。

当然部長と先輩にシングルの部屋を譲り、私と同期のSはツインの部屋に泊まることにしました。

途中自販機でカンビ-ルとおつまみを買い、私たちは最上階の角に位置する部屋に行きました。

鍵を開けて部屋に一歩入った瞬間、「あ、この部屋なんか嫌ダナ」と感じました。

皆さんも旅先等で部屋に案内されたときこういう感じがすることありませんか?

何がどうというわけではないのだけれど、直感的に嫌な感じの部屋。

私はいわゆる霊感と言うようなものは一切持ち合わせていないのだけれど、たまにあるこの感覚。

しかも過去最悪の嫌な感じがしたのです。

それでも今日はSが一緒と言うこともあり多少心強かったため部屋に入りました。

ところが部屋に入って又ビックリ・・・・和風作りのだだぴっろい部屋なのですが、これが異常に汚い。

ホコリはかぶり放題、ふすまは薄汚く汚れて破けている、障子もしかり。

変な屏風みたいのがあったり。

畳はじめじめと湿っていて所々なんかコ-ヒ-でもこぼしたみたいに赤黒く染みがついているし、

どう見ても2~3年は使った気配のない部屋でした。

「何だこれ」と思い、よっぽど文句を言ってやろうかと思いましたが、

明日も早いことだしどうせ数時間しかいないのだから、

「風呂入ってビ-ルでも飲んで寝よう」と言うことになりました。

ところが部屋の奥の方にある風呂場が又大変!とても入れる気分の物ではありませんでした。

仕方無しに私たち2人は風呂もあきらめ布団をひこうとしたのですがこれも酷い。

じめじめとかび臭い。

布団をひくのもあきらめ、部屋の真ん中に胡座をかいて向き合い、

私たちはビ-ルを飲みながら雑談を始めました。

私が部屋の奥の風呂場の方をむいて、Sが窓の方をむいて。

しばらく話をしていると、Sのやつが急に私の話に対して生返事をするようになって来ました。

私は「疲れているせいだな・・・そろそろ少しでも寝るか」と思い、ふと部屋の奥の方を見ました。

するとさっきまで気がつかなかったのですが、

閉めたはずの風呂場のドアが開いているのが目に入りました。

そして薄暗くて良く分からないのですが、

そのドアの開いた隙間の床を何かもぞもぞと動いているのが見えました。

「何だ!今度はネズミか?」と驚いていると、その少し上方に黒くて丸いものが見え始めて来ました。

私は次の瞬間自分の目を疑いました。

それが何であるのかが分かったからです。

それは間違いなく髪の長い女性の頭部でした。

最初にネズミと思ったのはその女性の手でした。

つまり正座をして床につけた両手を大きく前に突き出すような、

つまり土下座をするような格好をした女性が

ずる・ずると少しずつ這うようにして風呂場から出て来ているのです。

髪の毛はだらんと下にたれ顔は確認できませんでしたが・・・。

私は何が起きたのか把握できず、しばしぼ-っと眺めてしまいました。

やっと少し我に帰って、Sに「な-俺今とんでもないもの見ちゃってるよ」と

素っ頓狂な事を口にしてしまいました。

するとSは「おまえもか?実は俺もさっきからそうなんだ。

ここの部屋確かベランダなんか無かったよな。

だけどカ-テンの隙間、窓の外から女の子が俺を睨んでるんだ。

おい、絶対振り向くなよ!

俺はさっきから目を合わせちゃいけないと思って目をそらしてるんだけど。」と言いました。

私は「でもちょっとやばいかも・・・あの女近づいて来てるよ。」と言いました。

「とにかく何気なくここを出よう!」と言うことで、何も無かったようなそぶりで

ゆっくりと2人でドアに向かい部屋を出ました。

あの時はよく2人とも冷静に行動できたと今でも不思議です。

部屋を出るなり2人は転げるように走って先輩の部屋に逃げ込んだのです。

翌朝フロントに散々文句を言い、2度とそのホテルを利用しなかったことは言うまでもありません。

あの時あの女がくることに気づかず

私たちのすぐ近くまできてしまっていたら・・・と思うと今でもゾッとします。

まさか東京のど真ん中しかも銀座であんな体験をするとは・・・・

恐いよりもあのホテルに無性に腹が立ちました。

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